父が免許返納した。
私が警察署に連れてって手続きを見守った。
肺がんのステージ4と診断されても、
運転したいと言い続けた。
昔から車の運転が好きで、仕事も車の部品の会社に勤めてた。
痩せ細ってフラフラして、判断も鈍ってるのに、それでも運転したがった。
自分で怖いと思わないのだろうか?
こんな状態では事故をおこすかも、と。
母は、やめたほうがいいと止めたけど、
父が大丈夫だといって、その会話の繰り返しで、そのうち母は「お父さんの生きがいを奪っちゃうのはかわいそう」
って言い出して。
は?
そんなこと言ったって関係ない。
私は運転しないでと何度も言った。
生きがいもクソもない。
それで誰がが死んでしまうのかもしれない。
そんな可能性のある生きがいなんて、生きがいと言っていいのだろうか?
これは家族の義務なんだ。
お前のせいでどこにも行けなくなったって言われてもいい。
私が行ける時は車出すよ。
足がなくなったって言うけどさ、足はあんたに付いてんの。
2本。足があれば行けるんだよ。
指が動けば電話でタクシーを呼ぼう。
免許返納した帰り道の車の中、父は返納しようと思ったのは池袋の車暴走事故のニュースをを見て自分もああなりかねないと思ったからと言ってた。
私もずっとそう思ってた。
父はやりかねない。
ずっとあの事件のようになるんじゃないかと不安だった。
今日初めて父から、自らが同じようになる危険があると思ったことを聞いた。
何度もニュースに流れて、裁判のたびにメディアに出る。父は最近の裁判の判決のニュースで初めて返納をしようと決意できた。これまで裁判のたびに報道されてみてるはずなのに、最後の最後で返納しなければと思った。
風化させてはいけないと思った。
そう思うと頑張って戦い続けたあの旦那さんは、多くの人の命を救ったんだ。